どこかのお屋敷に暮らす「悪食娘」さん。
昼間は贅の限りを尽くした食事、夜はとても食べ物とは思えない食材を使った食事を与えられ、どちらも残すと叱られます。
ある晩、乙女の生き血を求めて彷徨う青い髪の吸血鬼さんが、彼女の部屋のバルコニーを訪れます。
可愛い悪食さんを一目で気に入った吸血鬼さんは、彼女に向かって「僕のお嫁さんになって(=吸血鬼になってずっと一緒にいて)」
心は子供に等しい悪食さん、「お嫁さんってなぁに」「お嫁さんになったらここから出なきゃいけないの?」「そんなの嫌。叱られるもの」
求婚に失敗した吸血鬼さんは、彼女にロクでもない物を食べさせてばっかりのお抱えコックを始末し、悪食さんの晩餐に同席して「今日からは僕が君のコックだよ」
悪食さんは首を傾げます。
だって目の前の青い人は、どう見ても貴族然とした格好で、とても料理人には見えません。それに、夜は「悪食の時間」。彼に何が用意できると言うのでしょうか?
不思議がる悪食さんににっこり微笑んだ彼は、無造作に自分の腕を切り落として差し出します。
高位の魔物の血肉は、普通の人間にとっても美味。まして悪食さんにとっては尚更。
性格の悪いメイドと頭の悪い召使いが彼を追い出そうとしますが、吸血鬼さんは「僕を追い出したければ、僕よりも珍しい食材を持っておいで」と取り合いません。
しばらくはそんな日々が続くのですが、吸血鬼さんの存在と彼がやっていることが、悪食さんにその妙な食事を摂らせ続けている張本人(館の主。誰だろう。決めてない。継母とか?)にバレます。
流石にヤバくなったので、吸血鬼さんは姿を眩まそうとするのですが、「優しくて美味しい」彼がいなくなるかもしれないことに悪食さんパニック。
身の危険を知りながらも悪食さんを放っておけない吸血鬼さん、悪食さんを宥めるために、夜通しずっと傍にいます。
悪食さんが泣き疲れて眠る頃には朝がやってきて、意識を保っていられなくなる吸血鬼さん。
もう彼女と一緒にいられないことが寂しいような、永くて孤独な命の終わり方としては悪くないような、そんな気分で目を閉じます。
その晩のメインディッシュとして食卓にのぼる吸血鬼さん。いつも通り残さず食べる悪食さん。
そして彼女は、「彼」を殺して料理したコックを食べ、メイドと召使いを食べ、館の主人まで食べ尽くします。
そして最後に右手を見ながら「まだ食べる物あるじゃない」と微笑み、ジ・エンド。
悪食さんは「食べる」ことと、叱られることへの恐怖しか知らない。
彼女も吸血鬼さんも「好き」という言葉に縁が無い生まれ育ちをしているので、大切に思う相手に対してどういう行動をとるべきか分からないのが悲劇の原因。
悪食さんは不安を抑えて彼を逃がさなきゃいけなかったし、吸血鬼さんは彼女が泣いてもちゃんと逃げなきゃいけなかった。
「大好き」という気持ちも、大切な人を殺した人間への復讐心も、彼を食べてしまった自責(自殺願望)も、全て「食べる」という行動でしか示せない。
そんな「悪食娘コンチータ」像が浮かびました。
妄想におつきあい頂きありがとうございました!