『石畳の緋き悪魔』と『猶予の月』と『カンタレラ』ベースで悪ノ物語。
ある程度書きためたら加筆修正してサイトの方に格納します。
ほぼプロットなので、状況描写少なめの不親切仕様です。途中でブツブツ切れます。ごめんなさい。
樫の木陰に用意された茶席は豪奢で、それ故初夏の庭にはそぐわなかった。
一年の半分以上を雪に埋もれて過ごし、やっとの思いで艶やかな姿を取り戻した下生えは、召使いが6人がかりで運んだテーブルと、揃いの椅子によって無惨に押しつぶされている。ティーカップにはわざとらしく可憐な草花が描かれているというのに。
茶受けとして供されたスフレを口に運ぶ合間に、何度目になるかわからないため息を漏らす。
どうせ聞こえはしないだろう。大人達は政治と金儲けと社交界の醜聞に関する話に夢中で、彼らの話し声や食器がぶつかりあう音は、それはそれは耳障りなものだった。
青は緑の盾となる騎士の国。かつては礼儀作法を学ぶため、他国の良家の子女達が行儀見習いに訪れる程の厳格さを誇っていたというのに。
薄汚れた権力者達は威光を振りかざすことをやめないが、この国の品位が地に墜ちて久しいことを、少年は良く知っていた。
---何せ自分自身が、神の定めたもうた倫理とやらを踏み外した末に誕生した存在なのだから。
少年は仮面に隠された瞳を動かし、テーブルの中央の陣取る国王、すなわち自分の父親を見た。
遠い昔には公に親子として認められないことを悲しく思ったこともあった。
だが14の歳を迎えた今となっては、あの男と血が繋がっていることを汚らわしいと感じながら生きた時間の方が余程長い。